2016年4月16日 (土)

メールマガジン『ラーコモラボ通信』第57号から転載しています。『ラーコモラボ通信』は無料で配信登録が可能です。メルマガ登録はこちらから。

レポート「東北の地で『アクティブ・ラーニング』について検討する」

日向良和(都留文科大学 准教授)

去る3月5日、東北大学川内キャンパスにておこなわれました、図書館総合展地域フォーラムin仙台に参加しました。フォーラムテーマは「一歩先に踏み出す東北の図書館 教育が変わり図書館が変わる」と題し、東北大学附属図書館でのラーニング・コモンズ事例の報告を東北大学附属図書館事務部長の米澤誠氏よりいただきました。

実は、約2ヶ月前の1月29日に、国立大学図書館協会シンポジウムが東京大学にておこなわれました。こちらのテーマも「ラーニング・コモンズ、日本とアメリカでどう違う? -ラーニング・コモンズの役割を再定義する-」と称しており、アメリカ、中央フロリダ大学研究情報サービス部長のバーバラ・ティアニー氏より、北米大学でのラーニング・コモンズサービスモデルの報告や、日本大学小山先生より日本のラーニング・コモンズの特色と大学教育の関わりについて報告をいただいておりました。

今回のラーコモ通信では、この2つの報告を一続きとして、日本の学校に導入が図られつつあるアクティブ・ラーニングと、その状況でラーニング・コモンズや大学図書館、図書館員の役割、スキルなどを検討したいと思います。

まず、1月の国大図協シンポにおけるラーコモの姿役割について、米国大学では、学習スタイルが、事前学習や、学習・検討プロセスを重視するスタイルに変わっていく中で、主にICT(PCとデジタル情報資源の提供)のサポートを中心にラーニング・コモンズができてきたと報告されました。また日本の大学については、今後「アクティブ・ラーニング」というキーワードの中で、知識伝達中心から、情報収集・分析・検討といったプロセスを評価し、学生が能動的(アクティブ)に学んでいくというスタイルに、小中高の教育から大学まで変わっていくことが予想されると報告されました。

米澤氏から報告があった東北大学附属図書館の事例についても、学生たち「学び」の姿からズレつつあった東北大学附属図書館の姿を見直し、学生たちの多様な「学び」に対応する柔軟な「スペース」としてラーニング・コモンズが発案されました。東北大学でも、小中高での学びの変化を受けた、大学での学びの変化、「アクティブ・ラーニング」がこれからの学びの姿となり、そこで学生たちは印刷資料・電子資料を使って学ぶ「筆記学習」に加え、グループのメンバー間で学びあう「口述学習」がスタイルとなると米澤氏は報告しています。

現行学習指導要領でも、次期学習指導要領に向けての検討のなかでも、「社会変化の加速」「社会における情報の重要性」「知識(情報)の早い陳腐化」「学習し続ける必要性」を背景に、学習スキルを学校教育にて身につける重要性がうたわれ、ラーニング・コモンズの学習効果として、「学びの見える化」、「インタラクティブな学び」、「思考の明示化:意見を明示化し共有する学びあい」があると米澤氏から報告がありました。

また宮城教育大学渡邊愛子氏からは、宮教大でのラーニング・コモンズの事例報告がありました。総合大学の東北大学と違い、教員養成という目的がはっきりしている宮城教育大学では、小中高の教科書、指導書を元とした資料の利用や、小中学校での授業をシミュレーションできる模擬教室など、東北大学附属図書館とは違った姿のラーニング・コモンズが報告されました。

宮城教育大学の事例と、東北大学の事例、1月の米国、日本のラーニング・コモンズの事例では、それぞれの大学教育の目標、特色の違いから、表層的なラーニング・コモンズの姿には大きく違いが見られました。しかし、米国、日本、東北大、宮教大に共通点として、学生が能動的に課題を見つけ、解決をグループではかり、発信していくという「アクティブ・ラーニング」の姿と、それをサポートするための柔軟なスペースとしての「ラーニング・コモンズ」が見えてきます。

「ラーニング・コモンズ」を作ることが目標になっていませんか?米澤氏の報告に貫かれていた姿勢は、「学生の学びの変化に対応するスペース」です。ラーニング・コモンズでの「理想的な学び」に学生を指導するのであれば本末転倒です。最初はある程度の強制も必要な大学があると思いますが、学生たちが学びたいことを、学びやすくするためのラーニング・コモンズを、各大学の事情に合わせて考えていく意識が、大学図書館員に必要とされていると考えます。

最後に、地域フォーラムにご協力いただいた東北大学様、報告者の米澤様、渡邊様、そして報告に触れる機会をいただいた図書館総合展運営委員会と協賛企業の皆様に感謝申し上げます。