遠藤周作生誕100年

長崎を舞台とした「最後の殉教者」『沈黙』『女の一生』といった小説を中心に、作家が創作過程で参照した資料・史料を特定し、緻密に照合することで、作品への摂取状況を実証的に明らかにしています。その反映は小説の骨格から細部の表現にいたるまで、様々な次元に及んでいました。さらに個々の作品分析を通して、遠藤文学のテーマが日本人としてのキリスト教受容にあったこと、背景にはトマス・アクィナスへの躊躇とアウグスティヌスへの信頼があったことを著者は検証しています。それはまた、許す神、母の宗教という本質を託した〈母なるもの〉の形成過程の探究でもありました。

遠藤周作生誕100年の記念すべき年に、是非多くの方々に読んでいただきたい一冊です。

 

対象
遠藤周作の作品に関心を持つ読者、キリスト教文学愛好家など。