全国の自治体が発行する観光パンフレットを収集し、物理とデジタルアーカイブを作成しています。会期中は、担当在席時にデジタルアーカイブの見本をご覧いただけます。
観光パンフレットというエフェメラ
エフェメラ資料とは、当面の目的を果たした後に保存されることを意図していない、小規模な印刷物です。本プロジェクトでは、2022 年より、日本の観光エフェメラ資料、特に観光パンフレットの包括的な収集とアーカイブ化について、研究と調査を行っています。
観光パンフレットは、各地の駅や観光案内所、自治体のホームページなどで誰もが手に取れるメディアです。地域の沿革、観光名所、観光ルートや交通アクセスなど、その地域についての豊富な情報が、言語、写真、地図などのさまざまな形で表されています。「脆く、うつろいやすい」その性質ゆえに、エフェメラ資料には私たちの生きた文化を直截的に伝える資料としての価値があります。
観光パンフレットは、これまで保存されてきましたか?
国内に観光パンフレットの包括的なアーカイブはありませんでした。ただし、佐賀市立図書館は 1996 年から日本の観光パンフレットを体系的に収集してきました。全国を 5 つのブロックに分け、毎年 1 つのブロックの自治体を対象に収集するので、各ブロックの資料は 5 年に 1 度更新されます。しかし、資料のメタデータはほとんど作られず、更新の際に古い資料は廃棄されていました。私たちは佐賀市立図書館と協力し、廃棄資料を提供していただいて、アーカイブを構築しています。
資料はどれくらい集まっていますか?
- 集めた観光パンフレット:1,000 件以上
- デジタル化してメタデータを付けた資料:247 件
- 247 件の紙面の合計:4,872 ページ
- 247 件がカバーする地域:45 都道府県(東京都と長崎県の資料はまだありません)
- 発行年:2016〜2023 年(発行年を記録した 176 件)
- 記録した折り方:13 種類(折り方を記録した 66 件)
数はいずれも 2026 年 10 月 19 日時点のものです。
資料はどのように保管していますか?
佐賀市立図書館のご協力により、同図書館の観光パンフレットコレクションのうち、資料更新で出る廃棄資料をこのアーカイブに提供していただいています。2023 年度に九州ブロック 7 県(2018 年度収集)、2024 年度に近畿・中国・四国ブロックの 2 府 14 県(2019 年度収集)の観光パンフレットが届き、東京工芸大学建築意匠Ⅱ研究室で保管しています。予算の都合で 1 点ずつ保護するのは難しいため、都道府県ごとに中性紙の封筒にまとめ、保管箱に納めています。
メタデータはどのように作成していますか?
メタデータの設計では、(a) 利便性、(b) 相互運用性、(c) 一貫性・均質性を原則にしました。メタデータ作成ツールを開発して入力を支援することで、アーカイブを続けていける形にしたいと考えています。
一方で、運用上の課題もあります。基本的な入力だけでも 1 件あたり 5〜10 分かかるので、時間の負担が大きいことです。それから、一部の項目は主観的な判断や専門知識が要るため、複数の人が一貫して入力するのが難しいこともあります。
そこでいま、使う人の提案によってメタデータの項目を後から足せる仕組みを検討しています。記録をコア記録、プロファイル(分野ごとの項目)、語彙(値の一覧)、寄稿(どの資料にどの値を付けたか)の 4 層に分ける案です。
どのような取り組みを参考にしましたか?
2023 年 2 月に佐賀市立図書館を、2023 年 7 月に米国の各図書館(コロンビア大学、ハーバード大学、イェール大学)を訪ね、コレクションの視察と図書館員へのヒアリングを行いました。コロンビア大学とハーバード大学では、折りたたんだ状態と開いた状態の両方を記録するなど、図書館に行って実物を見なくても一定の研究ができるように、資料の物理的な特徴をできる限り残す設計になっていました。イェール大学では、ファインディングエイドを作ってからアイテムごとのメタデータを付けるなど、続けて資料を集めていくためには、コレクションの持続可能性への配慮が大事だと分かりました。
今後はどのような予定がありますか?
- 機関の共同による収集・アーカイブの分業:膨大なエフェメラ資料は、収集にもアーカイブ化にも一定のリソースが要ります。複数の主体・機関で分担して、持続的なコレクションを作りたいと考えています。
- 参加型フレームワークの開発:エフェメラ資料の制作者や一般の参加者が収集に関われる仕組みを作り、収集やデジタル化の労力を減らしたいと考えています。
- 記録にかかわるツールの開発:エフェメラの物理的な特徴をより正確に記録するための 3D モデルや映像、アニメーションなどの導入や、機械学習やコンピュータビジョンによるメタデータの自動抽出を予定しています。
一緒にできることはありますか?
- 資料収集やアーカイブに協力したい:資料をご提供いただける個人の方、機関や自治体の方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
- システム開発やメタデータ設計に協力したい:専門家や使う方からのご意見・ご助言をお待ちしています。
- アーカイブを使ってみたい:データベースは一般公開していません。研究や授業、展示などで試用したい方は、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:お問い合わせフォーム
プロジェクトサイト:https://tourism-ephemera.org
メンバー
香月歩(東京工芸大学)、楊寧(椙山女学園大学)、杉下佳辰(東京科学大学)、朱心茹(東京科学大学)、高田智和(国立国語研究所)
本アーカイブは、「国内の観光エフェメラ資料の包括的アーカイブに向けた基盤構築および実証研究」(国立国語研究所 異分野融合型研究)の研究成果の一部です。
研究発表
- 香月歩・朱心茹(2025)「脆くうつろいやすい記録をとどめる―エフェメラ資料アーカイブの実践」『情報の科学と技術』75 巻 8 号, 365–371. https://doi.org/10.18919/jkg.75.8_365
- Xinru Zhu, Ayumi Katsuki, Kashin Sugishita, Ning Yang, and Tomokazu Takada. 2025. Building a Japanese Tourism Ephemera Archive: Case Studies, Metadata Design, and Prototype Development. CHI EA '25. https://doi.org/10.1145/3706599.3719879
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